第116回 卒業証書授与式(平成27年3月1日(日))
開式の辞 卒業証書授与(商業科 総代)
卒業証書授与(情報処理科 総代) 校長告諭
在校生総代送辞 卒業生総代答辞
3学年団挨拶 3担似顔絵
立看板 全体
【平成26年度 三重県立四日市商業高等学校卒業式 校長告諭】
 つい先日も大雪で交通が大きく乱れ、冬の厳しさを身に染みる日が続いてきましたが、 この頃はようやく日の光のやわらかさを感ずるようになってきました。
 本日ここに三重県立四日市商業高等学校第116回卒業証書授与式を挙行致しました所、ご多忙な中、 三重県議会議員様を始めといたします多数のご来賓、また保護者の皆様のご臨席を賜り、 高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。
 保護者の皆様方、まことにおめでとうございます。ただいまご覧いただきましたように、 三重県立四日市商業高等学校第116期生、278名に卒業証書を授与いたしました。 お子さま方が、ここにめでたく卒業を迎えられましたことに対し、心からお祝い申し上げます。
 卒業生の皆さん、あらためておめでとうございます。思い起こせば、皆さんは3年前にそれぞれの中学校の制服に身を包み、 緊張の面持ちで尾平の坂を上ってこの四日市商業高校での入学選抜を受け、見事に合格されました。
 満開の桜の迎えるなか、入学式に新しい高校の制服で臨まれたあの日からあっという間の3年間、 いろいろな思い出とともに、二度とめぐり来ることのない青春の貴重な時間を、 この四日市商業高校で過ごして今日を迎えられました。
 皆さんの胸中は、今きっとすがすがしい満足感に満ち溢れているものと思います。
 しかし、こうして卒業証書を手にできたのは決して自分だけの努力ではないことを忘れないようにしていただきたい。 皆さんが今日あるのは保護者の皆様をはじめ、 先輩、友人、また、温かい目で見守ってくれた地域の方がたがいます。
 そして本校の先生方も、君たちの幸せを思う気持ちは誰にも負けません。決して一人で生きているのではないことを忘れないでください。
 さて、現在、国会では選挙権を18歳に下げる決定がなされようとしています。 高校教育の目的は主権者たる国民を作ることです。高校生活を終えた今、主権者たる国民としての自覚はいかがでしょうか。 皆さんは来年の夏には参議院選への投票の機会を得ることになりそうです。直接、この国の在り方にかかわることになります。 それは大人としての重い責任が生ずるということでもあります。
 今、政府は戦後の平和国家日本の在り方を変えようとしています。 例えば、自衛隊が国連の決議とは関係なしに、いつでも世界のどの国にでも出向き戦うことが出来るような法案を 準備していると報道されています。このような現在の政府の方針について危惧する声があります。 しかし、この政府となることを前回までの選挙で選んだのは投票権を持つ主権者たる国民なのです。
 選挙権以外にも大人として向き合わなければならない場面が、今後たくさん増えてくると思います。 皆さんには、その時に忘れないでほしいことが二つあります。
 一つは、何のためにそれがなされたのか、あるいはなされようとしているのかを考えてほしいということです。
 もう一つは、何かをしようと思った時に、損か得かではなく、それが正しい事なのかどうか、で考えてほしい。 この二つを忘れないでほしいと思います。
 1年前に陸前高田から村上先生をお招きして東日本大震災での被害の甚大さについてお話を頂きました。 また、夜暖房もなく真っ暗で凍える避難所で自分のウィンドブレーカーをお年寄りに差し出した多くの高校生を はじめとする若者の行動が、いかに一人一人に輝きがあったかを教えてもらいました。
 3月11日震災当日に亡くなられた方の数、15,890人 現在までいまだに行方不明の方の数2,590人、震災関連死の方の数3,194人、 すなわち22,000人以上の方がなくなられました。
 復興庁が発表した先月15日段階での避難者数は229,897人です。住み慣れた地を離れての避難生活。 そこにはそれまで勤めていた会社もありません。住んでいた家や建てた家もありません。 特に福島県からは県外におよそ4万6千人の方が避難して帰れずにいます。 その福島県では原子力発電所の事故で漏れた放射能の影響がないか、子供たちの甲状腺について調査も行われています。
 日本では3年前の5月にすべての原子力発電が停止しました。関西地方ではその年の夏の電力不足を理由に1年間大飯原発が動かされましたが、 翌年秋以降再び日本中の原子力発電所は止まったままです。
 このまま原子力発電所を止め続けるのは電力会社にとって損失が大きいということで再稼動に向けて手続きが進められています。 損得、すなわち経済的な利益よりも、それが正しい事なのかどうかこそ重大なことなのです。
 かつて三重県にも原子力発電所を作る計画がありました。 地域の利益ということで長い議論がありましたが、県民が選挙で選んだ知事が三重県には原子力発電所は作らないという 決定をしたのです。
 ところで皆さんは『夜と霧』という作品をご存知でしょうか。 アウシュビッツを生き延びたヴィクトール・フランクルという方の書物の日本名が有名ですが、 もとはフランク・レネという映画監督の映画の作品名です。この映画のナレーションに次のような部分があります。
 「我々は遠ざかる映像の前で希望が回復したふりをする。ある国のある時期における特別な話と言い聞かせ、 消えやらぬ悲鳴に耳を貸さぬ我々がいる。」どうでしょう。
 福島第一原子力発電所が爆発をしたときの映像、修学旅行で訪れ学んだ沖縄戦の映像、広大なアメリカ軍の基地の 風景を「遠ざかる映像」にしてはいないでしょうか。
 ところで、一昨日、みなさんは同窓会入会式に参加されました。そして今日から四日市商業高校の同窓会の一員です。
 全国各地で過ごされている同窓会員の皆さんは、報道で知る母校のことをよく知っています。 特に今年は運動部について、全国的に活躍するクラブが増え、インターハイには硬式テニス、陸上競技は短距離も駅伝も、 ハンドボール部は国体も全国選抜も、そしてバスケットボール部は全国ベスト8に輝きました。
 遠方に住む高齢の卒業生の方から、かつて男子校であったときから泗商はスポーツ強豪校だったが、 団体スポーツで全国ベスト8は初めての快挙ではないですか、と歓びのお便りもいただきました。
 君たちの努力によってかれた成果はきっと先輩たちの喜びとなり、 また後輩たちのさらなる活躍を生む礎となると思います。
 泗商での3年間、一人ひとりの得意不得意はあれども、着実に成長され力をつけました。 その力は小さいものかもしれません。 しかしその力は暖かく、互いに支えあえることのできる力でもあります。 皆さんの力は、あるべき未来を選択し作り上げる力ともなります。
 本校で培った力と獲得した仲間や先輩との絆を大切にし、それぞれの夢の実現に向けて歩み続けられること、 そして皆さんの未来に幸多いことを祈念し、本日の告諭といたします。
 第34代校長 水谷久康
平成27年3月1日